日本人の色彩感覚
相変わらず日本旅行が人気だ。バンコクのあちらこちらで、旅行会社の広告を見る。日本の風景が色鮮やかに描かれている。
日本といえば桜、紅葉、雪、富士山…
間違ってないのに何かが違う。広告を凝視する。違和感の正体は色使いだ。桜は「ピンク」色。紅葉は「オレンジ」色。違う、そうじゃない。しかし、「桜色」や「山吹色」をタイ人に伝えるのは難しそうだ。
バンコクのネイルサロンで秋らしい色使いを希望した。澄み切った秋空の水色。光を遮るようなアスファルトのグレー。肌寒く穏やかな海辺の青…
そんな色はタイにない。相手が見たことがないものを言葉で説明するのは難しい。しか私のつたないタイ語。当然分かってもらえない。ネイルスタッフが持ってくるボトルの色はどれも何かが違う。最後は自らボトルを指指して指定。
仕上がりには満足だったが、その色使いがスタッフに納得してもらえた気がしない。
街ですれ違う人が日本人かどうかは遠目でも何となくわかる。やはり「色」が違う。肌ではなく服の色だ。日本人が選んだ色を、この国で見るとどこか野暮ったい。コーディネートにパンチがない。少し寂しげに見える事すらある。返って目立つから見つけやすい。
自分の色彩感覚が日本人独特のものだったとタイで実感した。
在タイ3年目。心の底から「友人」と呼べるタイ人は残念ながらまだいない。
色ひとつでこんな風だ。感性がぴったり!なんて出逢いには、まだまだ時間がかかりそうだ。